建築事例
伝統工法と現代の技術を融合させた古民家リノベーション
京都市左京区にある築95年の古民家を上質で居心地のよい住まいにリノベーションしました。
耐震診断を行い既存の壁や柱はそのままに基礎を全てやり直し建物の歪みを補強。断熱材を入れる余地の無い薄い壁厚には、高性能吹付けウレタンを用いてわずかな厚みで高い断熱性能を確保しました。伝統工法で建てられた建物の特性を活かしつつ新しい技術を融合させることで、現代の暮らしにあった快適で持続可能な住まいへと生まれ変わりました。
それと共に、増改築を経て現代風の内装に様変わりした古民家は、このリノベーションによって再び日本の伝統的な住まいの美しさを取り戻しました。
熟練の左官職人によって美しく仕上げられた聚楽壁や、京名栗仕上げの床柱に式台、釘を使用せずに仕上げた檜の階段。お施主様と私たちの妥協のないこだわりと、職人の技術が集結した贅沢な空間となっております。
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外観は周囲の落ち着いた街並みに馴染む京都らしい佇まい。新設したガレージも瓦屋根に木格子のゲートを備え、一体感を感じさせます。
階段は美しい木目を見せるため白木のままの檜を用い、釘を一切使わずに仕上げた大工渾身の作です。
今は白に近い色ですが檜は経年変化により徐々に深い褐色へとうつろい、使い込むほどに深みと愛着を増していく。時を共に刻む喜びを味わえる贅沢な空間です。
リビングに一歩足を踏み入れると、美しい庭園と大迫力の山景が視界に飛び込んできます。
土間からフラットに続く庭は、まるで空間がそのまま繋がっているような錯覚を覚えます。
栗の板を釿(ちょうな)ではつり加工した名栗仕上の式台。手加工でこの技ができる職人は全国でわずか数人のみと言われています。
襖にも遊び心を添えて。京からかみの美しい文様に引手を組み合わせ、ひとつひとつの部屋に物語を紡ぎ出します。
2階の勾配天井は建築当時のままの梁(ごろんぼ)を露わにしたことで、時を超えた美しさと歴史を感じられます。
全面檜貼りのラグジュアリーな洗面ルームは床暖房完備。ぬくもりをそのままに、ここでもゆったりとしたひと時を過ごせます。
トイレの天井は竹を黒く染め矢羽根模様に編んだ網代天井にしました。皮付き栗材のカウンターには信楽焼の洗面ボウルとアクセントに黒竹を1本設置し、細部まで魅力が詰まっています。
聚楽壁と古色仕上げの杉天井がしっとりと落ち着いた和の空間を演出。
床の間の垂れ壁と絞り丸太の面を敢えて出した床柱など、ここにも職人のこだわりが活きています。
今回のリノベーションの様子を全3回のコラムで詳しく紹介しております。
京町家や古い家屋の改修にかける中藏の想いや大切にしていることを知っていただければ幸いです。
ぜひ併せてご覧ください。