建築事例
蔵や 清水五条
この町家は、東隣の小川家(陶芸家)の店舗として明治時代後期より使われていました。当時は、江戸時代に建てられた本家の母屋と縁側で繋がっていたそうです。大事なお客様を一階座敷の縁側から本家の茶室に通して商談を行ったり、二階で何人もの職人さんに寝起きしてもらうことになるほど忙しかったり、数々のまちの歴史が詰め込まれた建物でした。店舗を閉じてからは、多少の改装を行いつつ賃貸住宅とされていましたが、空き家となり、また、建物の劣化も進んだため、大規模改修へ。
まちなみを整えるために、隣家と色味を併せて連続した家に見えるように改修しています。
壁は左官仕上げ。
玄関扉を開けると、路地のような空間に入ります。車が頻繁に通る大通りに面しているので、音を遮る機能と路地のように部屋に入るまでの土間空間を演出しています。
引戸を開けると、土間空間が続いています。外のような中のようなこの場所はお客様が来られても、すぐにお話が出来る空間となっています。
土間空間と連続して、和室があります。この和室は改修する前とほぼ変わっておりません。古さと新しさの中に、以前からあった落ち着いた空間と新たな広がりを感じさせる和室となっています。
低いテーブルは古材を加工したオリジナル。
和室奥にはひかりが降りそそぐ、中庭。自然を感じることの出来る素敵な空間です。
1階中庭
和室の隣に隣接するキッチンと洗面化粧台。キッチンは土間になっており、昔のおくどさんがあったときのような雰囲気があります。全ての土間空間には床暖房が入っており、寒さを感じることはありません。
天井・壁はヒノキ。ドアを開けた瞬間、ヒノキの香りがひろがり、気持ちの良い入浴を楽しむことができます。浴室の床にも床暖房が入っており、ヒートショックを防ぎます。
浴室に浸かりながら、中庭を眺める。一日の疲れも吹き飛ぶ贅沢な瞬間です。
2階に上がる階段は、昔の町家の急な階段から緩やかな階段に手すり付きで改修。階段が急で2階には上がれなかったけれど、これからは上がるのが楽しみになります。
2階廊下
2階の廊下の床は100年以上前の床。様々な人が歩き、様々な出来事があっただろうと想像すると、古くなった床にも愛着が湧きます。
2階寝室は畳の一部を板敷きにしてベッドを配置。和室でもベッドが似合う空間となっています。
2階寝室の窓を開ければ、自然豊かな、爽やかな風が入る寝室、お昼寝に最適です。
2階寝室の正面に見えるのは蔵。この景色は100年前から変わりなく、ここにあります。
既存の天井を撤去すると梁が出てきました。今まで表に出てこなかった部分ですが、今回は梁をあわらしで見せて建物の歴史を感じてもらうように設計しました。
既存のままの格子戸
2階和室
2階和室の障子。外部の格子の影と障子が織りなす幾何学模様は刻々と変化するモノクロの万華鏡のようです。
夜の外観は、主張しすぎず、おとなしすぎず、京都のまちなみに溶け込んでいます。