スタッフコラム

京都で家を建てる(4)「土地は南向きであるべきか?」

人気の高い南向きの土地

同じエリアで土地の南側が道路に面している、いわゆる「南向き」の土地と、北側が道路に面している「北向き」の土地があったとすれば、人気があるのは圧倒的に南向きの土地です。南に開けているということで、見晴らしや日当たりに優れているイメージがあるからです。「東南角地」ともなれば、求めている人が多いため市場に出回ることも滅多にありません。

しかし、「お得な土地探し」を考えた場合、狙い目は北向きの土地なのです。ここでは、その理由についてご紹介いたします。

方位イメージ

意外と多い南向きの土地のデメリット

南に開けていることで日当たりが良いのは確かです。ただし、良すぎる日当たりも考えものです。軒やひさしによる夏期の日射遮蔽をしっかり考えた建築をしないと、窓から入ってきた日射により室内は温室状態となり、一日中エアコンを稼働させなければならないハメに陥ります。タワーマンションで南向きの部屋を購入された方が、蒸し風呂状態となる室内環境に辟易され、北向きの部屋を買い替えたという話もあるくらいです。

もうひとつがプライバシーのこと。南側に道路があるということは、日当たりの良いリビングルームが道路を通行する人やクルマから丸見えになるということです。それを避けるために目隠しやカーテンをしていては、何のために開口部を設けたのか、訳がわからなくなってきます。周囲に何もなければ南向きの土地は最も優れた土地なのですが、京都のように建物同士が近接し、道路も敷地の直前を通る周辺環境まで含めて考えると、意外と難しい条件だったりするのです。

北向きの土地はメリットは設計次第

一方、北向きの土地には、リビングルームを設ける南側と反対側に道路が通るため、通行人やクルマの目を気にする必要がありません。また、道路から離れるぶん騒音も遠ざけることができ、静かな居住環境を手に入れることができます。

ただし、南側に隣地の建物がギリギリまで迫っている場合には、採光や隣家からの視線について考える必要があります。規格型のメーカーハウスだとこのあたりの融通がきかないのですが、注文住宅あれば、建物の形状、配置、トップライトやハイサイドライト、吹き抜け、階段室、中庭などのレイアウトにより、視線を遮りながら日射を得る設計が可能です。特に近年はコンピュータによるシミュレーション技術が進化しているので、四季それぞれの日当たりを設計段階で確認することも可能です。

また、道路側にあたる北側の部屋も捨てたものではありません。北側というと「暗い」イメージですが、まったく陽が差し込まないわけではありません。朝から夕方まで間接光のような柔らかい光が入るため、一日を通して安定した明るさの部屋になります。そのため、水まわりや家事室、書斎などに向いています。特に、蔵書やコレクションの日焼けを避けたい方は、北側の部屋に保管するのがおすすめです。

北向きの土地でのもうひとつの懸念が「湿気や結露」ではないでしょうか? 北向きというとジメジメしたイメージがあるかと思いますが、ご心配ありません。湿気は、敷地の向きというよりも建物の断熱と気密、通風や換気によるところが大きいのです。北向きであろうと南向きであろうと、結露をしない断熱・気密仕様と、建物全体の給排気を確実に行う通風・換気計画がしっかりしていれば、カビのなどの発生は防げるのです。

このように、南向きにこだわらなければ土地の選択肢もぐっと拡がります。気になる土地が見つかったら、前回までのコラム同様、思い通りの家を建てることができるかどうか住宅会社や建築士に相談してみましょう。
また、中藏の「家づくり勉強会」でもこのような疑問にお答えしております。快適で健康に暮らせる家づくりをしていただくために、勉強会への参加も合わせてご検討ください。