文:広報部
「京都中央卸売市場」のすぐそばに、「Kyoto Makers Garage(以下、KMG)」というものづくりをするためのスペースがあります。
今回このKMGを見学させていただき、責任者の牧野さん、ファブマネージャーのデヴィッドさんに「これからのものづくりについて」お話を伺いました。
―(広報部)まずはKyoto Makers Garageについて教えてください。
―(牧野さん)京都のものづくりスタートアップの拠点を目指して、また誰もが気軽にものづくりにチャレンジできる場所として2017年に京都市、京都高度技術研究所、京都リサーチパークと弊社とで開始しました。作ってみたいものがあればすぐに、気軽に作ることができるのがKMGです。先程近所の寒天屋さんが金型の試作を作りにいらっしゃってたんですが、いきなり量産化をするにはコストもかかりハードルが高いので、まずはここでアイデアを形にして、そのあと量産化体制に移るといった風に、KMGを使っていただいています。また、作業場所を提供するだけでなく、製品開発段階の技術コンサルティングも行っています。
―(広報部)ここに集まるみなさんはどんなものを作られていますか?
―(牧野さん)日々いろんなアイデアを元に、とにかくたくさん作っています。
端材を使ってパズルやオブジェを作ったり、ご飯を富士山型に盛り付けられる型を作ったり・・・みんないろいろ考えてきて面白いなあと思います。
また、こちらのスマートシューズ(Orphe)や木材のタッチパネル(mui Lab)は私たちが支援をしているスタートアップ企業が開発したものです。
―(広報部)面白いものばかりです。この技術を応用して、こんな物も作れるんじゃないかって、どんどん可能性が広がりますね。このエリアに拠点を置こうと思ったのはなぜですか?
―(牧野さん)利便性で考えれば四条烏丸などの街中の方が良かったんですが、街中で騒音やにおいを出すわけにもいきません。「ものづくりの拠点」を探したとき、ここがぴったりだったんです。NYのブルックリンが、かつて倉庫街だった場所にベンチャー企業やクリエイターが集いそのエリアが再生したように、ここも人が集まる場所になればいいなと思っています。京都が観光をするだけの街ではなく、産業をしにくる街になれば、京都に定着する足がかりにもなり、結果的に京都全体の活性化にもつながるはずです。実際にKMGの周りにはBBQ会場やアートホテル、クリエイター向けの不動産屋さんがあったりして、若い人達が集まるようになりました。
―(広報部)この辺りも以前は市場に近接しているので、一般の人は入れない雰囲気がありましたが、最近は学生など若い人を見かけるようになりましたね。
―(牧野さん)KMGではものづくりの裾野を広げるために、学生さんは無料で利用できるようにしています。今はコロナでなかなか来れませんが、立命館大学の学生が通ってくれていたり、京都工芸繊維大学とは、企業が提示した課題を解決するためのものづくりを行うプロジェクトに取り組んでいます。また京都のものづくり企業さんや学生さんとハッカソンを開催しており、「ヒートショックの防止」という課題の時には、浴室と脱衣所の温度差によって色が変わる照明を開発したり、みんな面白いものを作ってますよ。
こうした場所があることで、若い人をはじめいろんな人にものづくりを身近に感じてもらい、面白さを感じてもらえればと思っています。
―(デヴィッドさん)ここにある3Dプリンターやレーザーカッター、CNCなどは、はじめての人でもトレーニングを受ければすぐに使えるようになります。スマートフォンを使いこなしている世代なら抵抗なく覚えることができますよ。また、こうしたツールは日々アップデートされていて、使い方もどんどん簡単になっています。ものづくりのプロじゃなくても誰でも扱えるんです。
―(広報部)家づくりの現場でも、かつては手作業で高度な技術がないとできなかったことが、工具がどんどん進化しているのでプロじゃなくてもツールさえ使えれば誰でもできるようになってきました。DIYが流行って自宅のリフォームを自分でやってみようかなと気軽に思えるようになったのも、ものづくりが身近になったということかもしれません。
最後に、これからのものづくりはどう変化すると思われますか?
― (牧野さん)これまではあらゆるものの生産を中国に頼んでいましたが、コロナにより軒並み供給がストップしてしまいました。これからは生産の一極集中が見直され分散されるようになると思います。
― (広報部)生産が分散され、少量生産の時代になるということでしょうか。
― (牧野さん) アパレルショップのZARAは消費者ニーズに合わせて常に鮮度の高いアイテムを供給できるように、商品サイクルがとても速いんです。2週間ごとに商品を入れ替えるそうで、多少コストがかかってもリードタイムの短縮を重視しています。アパレルに限らず、他のものづくりの現場においても、この考え方が広まっていくんじゃないかと思います。ものづくりは計画生産、大量生産が当たり前、さらに初期投資が必要です。KMGで初期コストを抑えられれば、最短サイクルで少量ずつ生産ができるようになります。
― (デヴィッドさん)先程ものづくりのツールが日々アップデートされていると言いましたが、製造に使う材料もどんどん新しいものが出てきてますし価格も安くなっています。ものづくりをするためのデータはオープンソースになっているものも沢山ありますし、ここにある機械も公開されたデータをもとに作ったパーツを取り付けてバージョンアップしました。
― (牧野さん) ものづくりの設計図さえあれば、自分たちでローカルで作れるようになっています。どこで作るかはもう重要じゃありません。 「 Kinko’s 」みたいに 、今後KMGのような場所が増えて、手軽に誰でもものづくりができるようになっていくんじゃないかなと思います。
― (広報部)牧野さん、デヴィッドさんありがとうございました。
私たちが建設を通して「ひと、まち、わざをつなぐ。」を実現しようとしているように、牧野さんもまた、ものづくりを通して人と人をつなぎ、町の再活性化を目指し活動をされています。
手段は違えど、その先に見据えているものはきっと近いものだと思います。つなぎ手同士が手を結ぶことで、シナジー効果により新たな可能性が生まれることを期待しています。
Kyoto Makers Garage
営業時間:10:00~19:00
休業日:水曜日・木曜日