文:広報部
家づくりをされたお施主様のご意見は、とても参考になります。「快適だ」「暮らしやすい」とおほめいただくこともありますが、そればかりではないこともあります。さまざまなご要望や、時としてご意見の裏側にある真意を汲み取り、これからの家づくりに向けた課題として、スタッフ全員で共有することが大切だと考えています。
今回は、長岡京市で家づくりをされたO様にお話をうかがいました。引き渡しから丸一年を経過しての住み心地などについて、設計時の計画やシミュレーションがきちんと反映できているかなどの観点からご意見をいただきます。
聞き手:中藏に家づくりをご依頼いただいたきっかけは?
O様:中藏の古川さんとは以前からの知り合いだったんです。ある時、「中藏は高断熱高気密によりエアコン1台で快適に暮らせる家をつくっている」という話を聞き、興味を持っていました。その後、土地を購入して家づくりをすることになり、古川さんが言っていたことが本当なのか試してみようと。理屈では「なるほど」と思ってはいたものの、半信半疑のところも正直ありました。大金をかけた実験でしたね(笑)
聞き手:その結果はどうでしたか?
O様:まさに説明されていたとおりで安心しました(笑)。さすがに1年を通してエアコン1台だけで家全体の空調をまかなうのは厳しいシーズンもありますが、部屋が細かく分かれていない、大きな空間で構成された家であるとこうこともあり、少ない台数のエアコンで快適な温熱環境を保つことができます。その結果、いちばんびっくりしたのは電気代ですね。以前も分譲の一戸建てに住んでいたのですが、その頃と比較して6割程度の電気使用量で済んでいます。これはエアコンの稼働率もありますが、「家全体を明るくする」というコンセプトが影響しているかもしれません。自然光を積極的に採り込むことで、日中は照明をほとんど使わずにすんでいます。
聞き手:高断熱高気密仕様は実感できていますか?
O様:エアコンの稼働効率が高まり、電気代が安くなるというのは、まさに建物が高断熱高気密によるものだと思いますが、あわせて家全体の温度差が少ないというのも特徴ではないでしょうか。以前に暮らしていた一戸建ては、暖房を入れているリビングは暖かくても、廊下に一歩出ると寒くて。でも、いまの家はそのようなことがありません。お風呂の脱衣所でも暖かです。もともと薄着が好きということもあり、冬でもTシャツと短パンで過ごせるほどです。
聞き手:「家全体を明るくする」がコンセプトとのことでしたが、確かに明るい家ですね。
O様:「家が暗いと気持ちまで滅入る」と考えていたこともあり、明るい家にすることが優先順位の1番でしたね。そのため、この敷地で太陽の光を最も受ける東南側に、リビングからつながるバルコニーを設けて光の取り入れ口にしました。周囲からの視線をさえぎるために壁を高めに したバルコニーは、プライベートな屋外スペースとしても機能します。飼い犬と一緒に昼寝したりもしてますよ。また、室内の壁をホワイトにすることで、光が反射して全体に行き渡るようにも考えました。さらに、階段室の上部に天窓を設けることで、1階の玄関ホールに自然光を落とすことも考えています。
自然光の導入については、季節ごと、時間ごとの太陽位置と開口部の設け方を3DCGでシミュレーションしてもらいながら決定しました。実際、そのとおりの効果が得られてます。
聞き手:中身は高性能住宅なのですが、それに対して外観は和風の趣を感じますね。
O様:この家を考える時、「400年後まで残す」をコンセプトにしたんです。400年は言いすぎかもしれませんが、気持ち的にはそのぐらいの意気込みで。そのため、外観のデザインは、ずっと前からこの地にあったように思わせる、また、いつの時代になっても周囲の景観に対して違和感を感じさせないであろう「普遍的な日本の家」をイメージしています。また、補修が必要になったときには、いつの時代にも入手可能な材料を使うといったメンテナンス性も、「400年後まで残す」視点から念頭においています。
聞き手:長期の使用に耐えるという点でSE構法を採用されていますね。
O様:「耐久性とともに地震や台風といった天災にも強い」というのも魅力でした。住宅の強度や耐久性には妥協したくなかったので、価格が多少高くてもSE構法の採用は絶対でしたね。また、建物内部の柱や壁が少ないラーメン構造というSE構法の特徴も魅力でした。長期にわたり使うことができる家であるということは、ゆくゆくは人の手に渡るということ。その時に内部構造を総取り替えすることが可能な「スケルトン・インフィル」を考えられていることは、次の住まい手にとってもメリットがあることですし、そのような利便性がこの家自体の価値だと思ったからです。
聞き手:なるほど。単に耐久性だけでなく、資産価値という視点からも家づくりを考えられたわけですね。貴重なお話をいただきまして、ありがとうございました。