スタッフコラム

京都で家を建てる(42)中藏の住まいづくりは「大工が建てる家」への回帰をめざす

中藏は大工のいる工務店へ

中藏は、「京都に求められる工務店をめざす」という目標を掲げ、日々邁進しています。そのような目標を達成し、顧客満足度を高めていくためには、さまざまな社内の改革が必須であり、なかでも組織体制をより最適化していくことが重要と考えています。

組織の最適化のひとつが、「社員大工のいる工務店」への改革です。意外に思えるかもしれませんが、巷の工務店の中で社員大工を抱えている会社は少数派です。多くの工務店は、経営の効率化などの理由から、大工の仕事を外注しているのです。

しかし、このような効率化重視の外注を必ずしも良しとは考えていません。理由は、顧客満足度です。お客様が理想とする住まいづくりのお手伝いをさせていただくとき、社員大工と外注の大工、どちらがより良いかを考えると前者の方にメリットを多く感じるからです。

何事においても自社の効率化より、お客様の満足度を高めることを考える。それが「京都に求められる工務店」への道筋だと、私たちは考えています。

かつては大工さんがいる工務店が普通だった

町中を歩いていると、住宅の建築現場を目にすることがあると思います。そこで一生懸命に働いている大工さんを、多くの方は工務店の社員だと思っています。しかし、実際には工務店の社員ではなく外注の大工であることがほとんどであり、また「ひとり親方」と言われる個人事業主の場合が大半です。

かつては、工務店には大工がいるのがあたりまえでした。また、工務店の社長自らが大工だったり、かつては大工をしていたというのも多いパターンでした。しかし、工務店の経営者が世代交代をして設計やデザインに自社の提供価値の軸足を移したり、経営の効率化を考えていく過程で、次第に大工は外注へとなっていったのです。

なかでも、経営の効率化は大きな理由といえます。次から次に注文が舞い込み、常に手が足らない状況であれば、社員として常駐している大工はとても重宝します。しかし、いったん注文が途切れると、大工の手が空いてしまうことになります。仕事が無いにもかかわらず給与などの固定費が発生してしまうのは、工務店経営にとって負担となります。

その点、仕事があるときだけ発注ができる外注の大工は、経営にとって助かるのです。多くの工務店では大工の棟梁の代わりに「現場監督」という職種を設け、複数の現場をかけ待ちしながら、それぞれの現場で外注の大工や職人を管理するというスタイルに移行していったのです。

大工のパフォーマンスを引き出すために

現場監督が外注の大工や職人を一括して管理するというスタイルは、コストや工程管理といった経営の面からするとメリットがあるかもしれません。しかし、それにより大工の持つ技術や知識といったパフォーマンスを十分に発揮できるかというと、必ずしもそうとは言えません。

やはり、業務を委託する側とされる側というのは大きな壁です。外注の大工は、委託をされた設計図どおり、現場監督の指示どおりに施工するのが基本です。仮により良い施工方法などがあったとしても、それがコストアップや工程の遅れにつながるようであれば、よほどの信頼関係がない限り、設計士や現場監督に進言はしづらいものです。

そこで私たちは大工のパフォーマンスを最大限に引き出すために、業務を委託する側とされる側という関係性を変えていくことで可能性が高まるのではないかと考えました。それが社員大工です。

社員大工の育成へ

大工を社員にすることは、大工が現場監督や設計士と同じ社員として対等な立場になります。モノづくりに直接携わる立場から現場監督や設計士と協議をおこない、時に設計を変更することも可能です。指示どおりに施工する外注とは異なり社員としての責任も背負うことになりますが、「自分が建てた家」としてプライドも同時に持つことができます。

また、顧客満足度からの観点もあります。注文住宅では施工段階でお客様から追加のご要望をいただくことも多々あります。そのような時も、大工が社員大工であれば、その場の自主判断でお客様のご要望を聞き取りスムーズに反映することで、お客様の満足度を高めることが可能です。

さらに、中藏が得意とする京町家や古民家の改修には、新築住宅とはまた異なる専門の知識や技術が必要となってきます。しかし、外注の大工に依頼しているうちは、その知識や技術が社内に蓄積されることはありません。中藏として改修工事の完成度を高めていくには、社員大工が実績を社内にフィードバックする必要があるのです。

最後に社会的な課題として、大工の減少と高齢化があります。優秀な大工が年を追うごとに確保しづらくなっていく中で、自社で大工を育成することはメリットがあると考えています。そして、単に大工としての技術を身につけるだけでなく、設計や工程管理、商談といった幅広い業務を間近で目にすることができますから、大工仕事をするだけの大工でなく、オールマイティーに家づくりに携われる「スーパー大工」が生まれる可能性もあります。

大工が建てる家へ回帰をめざします

中藏が目指す住まいづくりを考えたとき、社員大工がプライドを持って仕切るような現場でありたい。これが、未来の中藏のイメージです。経営の効率化や時代とは逆行しているように見えるかもしれませんが、高い完成度と顧客満足度を考えれば、必ずしも誤ってはいないと考えます。

現在中藏には1名の社員大工がいます。今後さらに社員大工を増やし、中藏に「スーパー大工集団」を形成するべく、私たちと共に働いてくれる方を募集しています。また、これから大工を目指したい方からのお声がけもお待ちしています。お気軽にご相談ください。