スタッフコラム

京都で家を建てる(38)二世帯住宅づくり実践編〈狭小地でも建築は可能か?〉

京都市全景

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ここまで何回かにわたり、二世帯住宅づくりをするにあたってまず最初に考えておくべき「将来の相続のこと」「資金計画や税金などお金のこと」「年を経ることで変化する暮らし方のこと」についてご紹介をしてまいりました。今回は、二世帯住宅づくりシリーズの最終回として、「狭小地でも二世帯住宅の建築は可能か?」について考えてみたいと思います。

二世帯住宅をつくるにあたって必要な広さは?

都市部での住まいづくりにおいて、「狭小地でも二世帯住宅の建築は可能か?」というテーマは、切実な問題です。京都の中心部にお住まいの方にも、同様のお悩みを抱えておられる方は多いのではないでしょうか。

住まいづくりをするときの広さの目安として、2021年に閣議決定された「住生活基本計画」において策定された「最低居住面積水準」と「誘導居住面積水準」があります。

「最低居住面積水準」とは、世帯人数に応じて、健康で文化的な住生活の基本として必要不可欠な住宅の面積に関する水準です。また、「誘導居住面積水準」は、世帯人数に応じて豊かな住生活の実現の前提として、多様なライフスタイルを想定した場合に必要と考えられる住宅の面積に関する水準です。「誘導居住面積水準」は、さらに「都市居住型」と「一般型」に分けられます。

仮に、子世帯4人+親世帯2人だとした場合、「誘導居住面積水準」の「都市居住型」では135㎡(およそ41坪)、「一般型」では175㎡(およそ53坪)が必要と考えられます。そして、京都市は都市といえますから、「誘導居住面積水準・都市居住型」に照らし合わせるなら、およそ41坪の延べ床面積が、必要ということになります。

所有している土地で二世帯住宅づくりは可能か?

例えば、親世帯が所有している土地で二世帯住宅に建て替えることを考えるとなると、「所有している土地でどれだけの広さの建物が建てられるのか?」を調べる必要があります。これについては、当コラムの2018年4月の記事「京都で家を建てる(5)用途地域のことを知っておこう」同年5月の記事「京都で家を建てる(6)建ぺい率と容積率について知ろう」で詳しくご紹介をしています。

簡単におさらいをするならば、京都市内は12種類の「用途地域」に分けられ、同時に「建ぺい率」と「容積率」が定められています。そして、建築の際には、この「建ぺい率」と「容積率」の範囲内での建築が、義務づけられています。たとえば、京都市中心部の「田の字地区」周辺だと「近隣商業地域で建ぺい率80%/容積率300%」「準工業地域で建ぺい率60%/容積率200%」などがよくあるタイプです。

41坪の延べ床面積の二世帯住宅を建てるとするならば、どのくらいの敷地が必要なのでしょうか?上記の数字を元に計算するならば、「近隣商業地域で建ぺい率80%/容積率300%」地区では2階建ての場合26坪の敷地が、「準工業地域で建ぺい率60%/容積率200%」地区では2階建ての場合35坪の敷地が必要ということになります。

逆に言えば、最低限これぐらいの敷地がないと、多少のゆとりがある二世帯住宅ライフは難しいといえます。

狭小地での二世帯住宅づくりの工夫

敷地の問題がクリアできたら、次は間取りや設備の検討です。限られた空間をいかに有効に使うか、また、無駄なスペースを作らないかがポイントになってきます。

2021年11月のコラム「京都で家を建てる(20)二世帯住宅を考える〈プラン編〉」でご紹介をしたとおり、二世帯住宅には大きく分けて「完全分離型」「完全共有型」「部分共有型」の3つがあります。「完全共有型」や「部分共有型」は、玄関や水まわり、リビングルームなどの全てあるいは一部を共有するため、スペースを有効に使うことができます。

理屈的には、設備を共有すればするほど居室スペースは広くなります。ただし、二世帯間の距離が近くなるぶん、ストレスが増えるのも事実です。このあたりのバランスを考えるのが、間取りづくりの最大のポイントとなるでしょう。

また、間取りを考えていく中で、意外と困るのが収納スペースです。「断捨離しましょう」「無駄なものを置かないようにしましょう」といっても、それなりに物を置いておくスペースは必要です。

住まいづくりにおいて収納スペースの目安は床面積の10%ともいわれていますが、これだけまとまったスペースを建物内に確保するのは難しい場合が多いものです。建物内のちょっとした隙間や立体空間を利用して、いたるところに収納スペースを設けるなどの工夫をしていくことになります。

親世帯は1階?それとも2階?

親世帯と子世帯の居住スペースは、「完全分離型」「完全共有型」「部分共有型」いずれにかかわらずフロアごとに分かれるのが基本と言えます。その場合、親世帯のスペースは1階にするか、それとも2階にするかを考える必要があります。

足の筋力が衰える親世帯が1階に暮らす方が、出かけるときや訪問介護を受ける際に便利なのが原則といえます。しかし、2階に居住する子世帯の出入りが頻繁であったり、生活リズムが異なることで、親世帯の就寝時に生活音が発生するようだと、親世帯にストレスをあたえることになります。そのような場合は、1階に子世帯が、2階に親世帯が居住するほうがよいかもしれません。

ただし、そうなると困るのが親世帯の階段の昇り降りです。その解決策となるのが、ホームエレベーターです。設置価格がそれなりの値段であり、また定期点検やメンテナンスなどのランニングコストがかかるのは事実ですが、騒音のストレスに晒され続ける暮らしとどちらを取るかとなると、検討に値するかもしれません。また、昇降機器としては、既にある階段を使って設置する「いす式階段昇降機」という選択肢もあります。こちらは、価格がホームエレベーターに比べて安く、スペースもとらないのがメリットです。

また、親世帯、子世帯に関わらず、音楽や映画鑑賞など大きな音が発生したり、蔵書が多い場合には、「地下室」を設けることも考えられます。地下室は遮音性が高いため、それぞれの世帯に音の迷惑をかけることが少なくなります。また、蔵書の日焼けなども防ぐことができます。さらに、地下室は延べ床面積の1/3までであれば容積率の緩和を受けられるので、生活スペースを広げられるのもメリットです。

狭小地の二世帯住宅に有利なSE構法

以上のように、狭小地で二世帯住宅づくりをするのは、単世帯の住宅を設計する以上に、家族(二世帯)の暮らし方をベースにした基本計画や間取りづくりが大切となってきます。こうなってくると、規格化された商品住宅では対応が難しく、フルオーダーが可能な注文住宅の独壇場と言って良いかもしれません。

そして、このフルオーダーにとって力強い味方が、耐震工法SE構法です。「SE構法は大空間、大スパンの住宅のためのもの」というイメージがありますが、実は狭小住宅を建てるのにも適した構法なのです。

ラーメン構造という外側のフレームで建物を支える構造は、内部に建物を支える柱や壁が必要ないため、内部空間を広く使えて、間取りを自由に配置できるのです。そして、大きな開口部を設けられるため、それぞれの世帯にたっぷりの陽光を届けてくれます。さらに、強固な構造体は、底面積の小さな狭小住宅であっても地震から建物をしっかり守ってくれます。

中藏は、これまでさまざまな住宅をSE構法で建ててきました。また、京都ならではの「うなぎの寝床」と言われる敷地での設計施工も数多く経験してきました。もちろん、その中には、たくさんの二世帯住宅がありました。そのような技術の積み重ねと知見をベースに、「狭小地での二世帯住宅づくり」もサポートできるものと考えています。お持ちの土地での二世帯住宅づくりにお困りになったら、まずは中藏にご相談ください。