二世帯住宅の費用負担はどうする?
二世帯住宅に限らず、家を建てるときの課題となるのは、費用や住宅ローンの組み方など、いわゆる資金計画のこと。さらに、二世帯住宅となると、ふたつの世帯の費用負担割合も検討課題となってきます。
今回は、二世帯住宅の資金計画で失敗したり、世帯間のわだかまりを残さないように、資金計画をする際のポイントについてご紹介します。
二世帯住宅の建築費は割高になりがち
二世帯住宅は、単世帯に比べて居住する人数が多くなるのが一般的ですから、必然的に建築面積も広くならざるを得ません。そのことは、建築費にも反映されます。
ただし、これは水まわりやリビングルーム、玄関などを二世帯で共用する「完全同居型」の場合。玄関やリビングルームは共用するが、水まわりはそれぞれの世帯専用に設ける「部分共有型」や、玄関も2つ設けて生活空間すべてをわけた「完全分離型」になると、さらに費用はアップします。
浴室や洗面所、トイレを2世帯分設けると、設備機器の価格や施工費をあわせて数百万円のアップになります。また、キッチンを2つ設けても、同等かそれ以上の費用が発生します。さらに、玄関を2つにすると、土間や玄関ホールのスペースが必要になるほか、建具や家具も2セット必要になってきます。
具体的な数字で見てみましょう。
「2014年 注文住宅動向・トレンド調査」(リクルート住まいカンパニー調べ)によると、日本の平均的な単世帯と二世帯住宅の床面積と建築費の平均は以下のとおりです。
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【単世帯】平均延床面積:43坪 平均建築費:2,625万円
【二世帯住宅】平均延床面積:57坪 平均建築費:3,566万円
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また、「完全同居型」「部分共用型」「完全分離型」それぞれの平均建築費は以下のとおりです。
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【完全同居型】平均建築費:3,200万円
【部分共用型】平均建築費:3,695万円
【完全分離型】平均建築費:4,009万円
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どのような二世帯住宅にするかで、建築費に差が出るのがおわかりになられると思います。
一般的に完全分離型のほうが、世帯間の距離感が離れるぶんストレスは軽減されます。しかし、そのぶん建築費用はかさむことになります。また、共用か分離かは、建ててしまうと後からの変更は難しい部分でもあります。このあたりのバランスをあらかじめ計るのが二世帯住宅づくりの難しいところのひとつといえます。
親子で負担する住宅ローン
家づくりにおいて避けて通れないのが、住宅ローンをどうするかです。そして、二世帯住宅ならではのローンとして、「ペアローン」や「リレーローン」というものがあります。
「ペアローン」とは、親世帯と子世帯がそれぞれにローン契約をして、2世帯分の借入額で資金計画を行なうものです。単純に言えば、単世帯の2倍の資金を調達できます。また、金利や借入額、そして返済期間については、それぞれの世帯の都合にあわせて設定することができます。
なお、注意点としては、手数料もそれぞれに必要となってくること。また、親世帯が高齢の場合は、ローンの審査に通らない可能性もありますから、事前の確認が必要です。
「リレーローン」は、名称どおり親子でローンをリレーしていく住宅ローンです。まずは親世帯が住宅ローン契約を行い、その後、子世帯がローンを引き継ぎます。親世帯と子世帯の収入を合算したものが基準となるため、借入可能額は余裕のあるものとなります。また、長期間のローンを組むことができるため、月々の返済額を無理のないものにできるのもメリットです。
リレーローンの注意点としては、ふたつの世帯それぞれのローン返済額の負担割合と、建物の所有権の割合(持分割合)とを合わせておくことです。親世帯と子世帯の持分割合が50:50なのに、ローンの負担割合が70:30だった場合、その差額が親世帯から子世帯への贈与とみなされ、贈与税がかかってしまいます。
完全分離型の場合には税金の軽減措置が2倍に
住宅の新築時には、不動産取得の軽減措置を受けることができますが、「一つの建物に二世帯分の住宅が存在している」と認められた完全分離型の二世帯住宅の場合には、さらに二戸分の軽減措置を受けられる場合があることを知っておきましょう。
住宅を新築した場合、床面積が50平方メートル以上240平方メートル以下の住宅であれば、1,200万円(長期優良住宅の場合は1,300万円)が固定資産税の評価額から控除されます。この控除額が、二戸分と認められる二世帯住宅ならば2倍となります。
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例)固定資産税評価額が4,000万円の長期優良住宅の場合の不動産取得税
□一戸建て
(4,000万円-1,300万円)×3%=81万円
□二世帯住宅
(4,000万円-2,600万円)×3%=42万円
不動産取得税に39万円の差が生じます。
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また、毎年発生する固定資産税についても、二戸分と認められる二世帯住宅ならば、軽減措置も2倍となります。
土地については、通常200平方メートルまでの住宅用地であれば「小規模住宅用地」とみなされ、固定資産税の課税標準額が1/6に、都市計画税の課税標準額が1/3に軽減されます。これが、二戸分と認められる二世帯住宅ならば、400平方メートルまでが同じように認められます(いずれも2024年3月31日まで)。
また、建物については、一戸であれば120平方メートルまでが、固定資産税が3年間にわたり1/2に軽減されます(2024年3月31日まで)が、二戸分と認められる二世帯住宅ならば、これが240平方メートルまでと広がります。
二世帯住宅はお金の面でメリットがある。しかし…
以上のように、二世帯住宅は土地代や建築費を2つの世帯で折半できるため一世帯あたりの出費額を抑えることができるほか、建物の構造にもよりますが、通常の2倍の税金の軽減措置を受けることもできます。
ただし、そのようなメリット面ばかりを優先して家づくりをしてしまうと、本当に理想的なふたつの世帯の暮らし方を見失ってしまう可能性もあります。また、なんらかの理由で同居を解消することになったり、将来の相続のことなど、さまざまな想定を織り込んでおくことも大切です。
さらに、新築段階では重要視していなかった、月々の光熱費などの生活費や、数年後に必要となってくるメンテナンスなどの維持管理費も、積み重なると相応なボリュームになり、これをどちらの世帯が負担するかも世帯間のストレスの原因になるリスクがあります。
しかし、このような想定のシミュレーションをご家族だけで完璧に行うことは、まず不可能と言えます。その点、中藏はこれまで多くの二世帯住宅づくりをお手伝いしてきた経験から、ご家族のさまざまな状況にもとづく最善の方法をアドバイスできます。
二世帯住宅づくりは資金計画やプランニング段階が最も大切です。「親と一緒に暮らす二世帯住宅を」とお考えになられたら、まずは中藏にご相談ください。