スタッフコラム

京都で家を建てる(26)暮らしのエネルギーについて考えてみる〈つくる工夫〉

太陽光発電イメージ

前回のコラムでは、家庭での生活においてエネルギーを使わない工夫、いわゆる「省エネ」の手法についてご紹介しました。今回は、自宅でエネルギーをつくる工夫、いわゆる「創エネ」についてご紹介します。自宅で電気を発電すれば、電力会社から電気を買う必要がなくなります。電気料金の観点からは究極の省エネと言えます。ただ、一方では発電設備の初期投資に費用がかかるのも事実です。はたして将来的に元をとることができるのか?について、簡単な試算も交えてご紹介します。

太陽光発電イメージ

創エネの手法は大きく2種類ある

創エネ手法のうち、家庭で使うものに限れば、「太陽光発電」か「家庭用燃料電池(エネファーム)」の二択になります。
太陽光発電は、屋根などに太陽光発電パネルを設置し、パネル内のシリコン半導体が光エネルギーを電気エネルギーに変換することで発電します。発電した電気は直流電流なので、パワーコンディショナーによって交流電気に変換され、家庭内で使用されます。
一方、エネファームは都市ガスから水素を取り出し、空気中の酸素と反応させて発電します。同時に発生する熱で、お湯を沸かして給湯を行うシステムです。なお、太陽光発電は、日射を得られる場所であればどこでも設置可能ですが、エネファームは都市ガスの供給エリアでのみ利用可能です。
また、どちらの発電方法も、自宅で使用する電気の一部を賄うことができるほか、余った電気は「売電」といって電力会社やガス会社に買い取ってもらうことができます。これにより、さらに電気料金の支出を抑えることができます。

創エネ設備は得をするのか?

ここまでのことは、家づくりを考えておられる方であれば、およそご存じのことかと思います。そして、もっとも気になるのは、「では、創エネ設備は得になるのか?」ではないでしょうか。
ここでは、太陽光発電パネルを設置した場合と、そうでない場合について、今から30年間に電気料金のために支払う総出費を簡単に試算をしてみましょう。条件としては、以下の通りです。

・電気料金が2022年時点で年間180,000円(15,000円/月)の平均的なオール電化住宅がモデル
・今後、年2%の割合で電気料金が上昇すると想定
・太陽光発電は、使用する電力の25%をまかなう。残りは電力会社から購入
・今後10年間の売電の買取価格は2022年の関西電力の価格(17円/1kw)で設定
・また、10年目以降の買取価格は5円/1kwを設定
・売電は発電量の70%を想定
・太陽光発電システムは出力4kwの一般的なサイズ。購入価格は1,000,000円
・15年後に、パワーコンディショナーの交換を想定。費用は150,000円

結果は、下記のグラフとなります。

太陽光発電あり/なし 30年後の支払い合計比較

ここでは、約180万円のお得になる試算となりますが、現在の世界情勢から考える化石燃料の将来価格を勘案すると、電気料金が年2%の上昇でおさまるかは甚だ疑問です。
そして、太陽光発電パネルの設置費用は、技術の向上や量産効果により、年々安くなっています。また、上記試算では自治体による創エネや省エネ補助金を加味していません。さらに、来月のコラムで紹介の予定をしている、「電気を貯める工夫」についても想定していません。それらを考え合わせると、お得の幅は180万円よりさらに広がる可能性もあります。

太陽光発電パネルの設置で注意すること

以前のコラムでもご紹介しましたが、京都には歴史的な町並みや景観を保全していくための独自の景観基準があります。この基準の中には、太陽光発電パネルの設置についても細かく決められています。
例えば、屋根面とパネルとの間にすき間ができる場合には、軒先に黒いカバーを設置して、屋根と一体に見せなければなりません。また、パネルの形を屋根の形状にあわせて配置しなければならない地域もあります。さらに、伝統的建築群保存地区や、歴史的風土特別保存地区では、たとえ道路などから見えなくても、パネル設置ができませんので、注意が必要です。

ネットの情報に振り回されない

創エネ設備のうち、特に太陽光発電システムについては、そのメリットあるいはデメリットに関するさまざまな情報がインターネット上で飛び交っています。それらを見ていると、果たしてどの意見を信頼して良いものかわからなくなってしまうのではないでしょうか。そのようなときは、ご自身で判断をするのではなく、私たち住まいづくりのプロにご相談ください。私たちは、これまでの設置経験やメンテナンスに携わっている立場から、お客様の利益の視点からアドバイスをさしあげられると考えています。