スタッフコラム

京都で家を建てる(21)二世帯住宅を考える〈お金編〉

二世帯住宅イメージ

お金の面から二世帯住宅を考えてみる

前回のコラム(二世帯住宅を考える〈プラン編〉)では、二世帯住宅を希望される方が年々増えていること、また、二世帯住宅のタイプや計画するにあたっての注意点についてなど、主にプラン作りについてお伝えしました。今回のコラムでは、二世帯住宅の「お金」のことについてお伝えします。

二世帯住宅イメージ

土地の取得が不要な建て替えのメリットは大きい

二世帯住宅を考えられる方の理由で最も多いのは「土地の問題」です。京都は盆地形状ということもあり、平地に限りがあります。だからと言って、山を削り平地を拡張することもできません。

このような土地の希少性と、「京都ブランド」イメージから、地方都市でありながら土地の価格が突出して高いのが京都です。そのため、京都で家づくりをするにあたっての第一の関門が「土地を見つける」ことになります。

その点、現在も親世帯が住んでいる家を建て替えて二世帯住宅にするのであれば、利便性の高い土地を無料で手に入れることができるわけです。また、子世帯にとってみれば、もともと自分が生まれ育った地域ですから、親しみをもって暮らすことができます。これは大きなメリットです。

減税措置が有利になるメリットも

住宅を新築すると、不動産所得税や固定資産税などの減税措置を受けることができます。二世帯住宅の場合は、さらに親子がそれぞれの名義で登記する「区分所有」にすることで、1戸の二世帯住宅が2戸の住宅とみなされ、条件さえ満たせば1戸分ではなく2戸分の減税措置が適用が期待できます。そのメリットについて以下に簡単に紹介します。

不動産取得税の節税

不動産取得税とは、その名のとおり土地や建物を購入する際に、その評価額に税率を乗じて算出した額が課税されるものです。その際に、一定の要件を満たしていれば評価額から住宅1戸につき1,200万円が控除されるという軽減措置があります。これが区分所有の二世帯住宅であれば、住宅を2戸と見なすため、軽減措置についても2戸分、つまり2,400万円が控除されます。

固定資産税の節税

京都市の場合、課税標準額の1.4%を固定資産税として毎年納税しなければなりません。ただし、土地の200平方メートル以下の部分は「小規模住宅用地」とみなされ、課税標準額が1/6に、200平方メートルを超える部分は課税標準額が1/3に軽減されます。

もし、親と子それぞれが1戸ずつ住宅を保持しているという区分登記にすると、1戸の二世帯住宅が2戸と見なされます。これにより倍の400平米までが「小規模住宅用地」扱いになり、課税標準額が1/6に軽減されます。

建物についても同様で、新築住宅であれば、各戸の床面積120平方メートルまでの固定資産税が最初の3年間(長期優良住宅の場合は最初の5年間)1/2となる軽減措置がありますが、これが2戸分であれば、倍の240平方メートルまでが対象となります。

住宅ローン減税

住宅ローン減税とは、住宅ローンの年末残債によって翌年以降の固定資産時税が減税される制度です。二世帯住宅を区分登記し、それぞれが住宅の購入資金のローンを組めば、各世帯が減税の措置を受けることができるのです。

区分所有は「完全分離型」の定義に注意する必要が

ただし、二世帯住宅で区分登記を行う場合は、住宅のタイプが「完全分離型」である必要があります。次のような構造の二世帯住宅です。

・各世帯が壁やドア等で遮断されており、構造上独立しているもの
・専用の玄関や台所、風呂などを備えており、利用上独立しているもの

つまり、各世帯が専用の「玄関」「キッチン」「トイレ」を持ち、独立して暮らせる二世帯住宅の構造になっていることが必要です。また、各世帯をつなぐ廊下などは鍵付きの扉などで仕切られていなければなりません。なお、「完全分離型」の詳しい定義は自治体によって異なります。二世帯住宅づくりに詳しい住宅会社としっかりと相談をしてください。

二世帯住宅は相続税も節税できる

2015年より、相続税の基礎控除額が「5,000万円+1,000万円×法定相続人数」から「3,000万円+600万円×法定相続人数」と減額されたことにより、相続税の申告が必要になった方が2倍になったと言われています。国税庁のホームページによれば、相続財産の構成比は土地の価格が約4割を占めます。そのため、小規模宅地等の特例の適用を検討することは大切です。

相続税の「小規模宅地等の特例」とは、330平方メートル以下の宅地の贈与にあたり、土地の相続税評価額を最大80%減額できる制度です。相続税を支払うために自宅を売却することがないように、住んでいる人や家を持たずに親の家を引き継ぐ人を守るための特例です。

二世帯住宅であれば「完全分離型」「完全共有型」「部分共有型」のいずれにおいても、小規模宅地等の特例が適用できます。ただし、節税目的に自宅の名義を変更することがないように、2018年4月1日以降法律が改正されていますので、注意が必要です。

また、「小規模宅地等の特例」を受けるには、被相続人の単独名義か家屋全体が被相続人と相続人の共有名義になっていることが必要です。二世帯住宅を区分所有登記をしている場合は、小規模宅地等の特例が適用できません。もし、区分所有登記をしている場合は、生前に共有登記に変更すれば、特例を適用させることもできます。ただし、変更によって所得税や贈与税が課税されることも考えられますので、税理士や司法書士に相談されることをおすすめします。

節税も大事だが、一番は家族の幸せ

以上のように、二世帯住宅にすることによる節税の効果は大きいのですが、節税を第一の目的にして二世帯住宅にするのも考えものです。前回のコラムでお伝えしたように、それまでの生活習慣やライフスタイルが異なる2つの世帯が近接して暮らすわけですから、多かれ少なかれストレスを感じることは否めません。節税のために無理に我慢したとしても、いつかはその我慢が限界に達するリスクがあります。

また、きょうだいがいる場合は、将来の相続についてまでしっかりと話し合いをしておくことも大切です。土地と建物という大きな金額の相続のため、金銭トラブルになる可能性があります。たとえ、「私が親の面倒や介護をした」と言っても、法定相続分の請求をされた場合は、法律で決められた割合に従って財産を分けなければなりません。

さらに、相続を行うのがまだまだ先の場合、「小規模宅地の特例」の制度がどうなっているかわからないということも想定しなければなりません。社会状況によって法律は改正されるからです。実際、以前は別居の子どもが小規模宅地の特例を使って相続する際に、自宅の名義を親族や会社名義にすることで自宅を持っていないことにする節税対策が行われていましたが、2018年の改正でこの手法は使えなくなりました。

ここまでお伝えしてきたように、二世帯住宅づくりをする際にはそのメリットとデメリットを冷静に判断し、家族や親族と協議をしながら、単世帯以上に慎重な計画を行うことが大切です。焦りや独りよがりの判断は、後々の家族間のトラブルにつながりかねません。

その点、中藏はこれまで多くの二世帯住宅づくりをお手伝いしてきた経験から、第三者的な視点でアドバイスをすることができます。「将来、二世帯住宅に」とお考えになられたら、まずは中藏にご相談ください。