京都の家づくりは内陸地震のリスクを想定する
前回のコラムでは、京都における地震発生の可能性や、その被害想定についてご紹介しました。大きな地震と聞くと、つい海溝型の南海トラフ地震を想起し、「京都は太平洋に面していないから津波の被害は大丈夫!」と、たかをくくりがち。しかし、その足元の地下の断層はいつ動いてもおかしくなく、それにより発生する内陸地震は京都市に甚大な被害を与える危険性をはらんでいます。
今回のコラムではそのような地震への〈対策編〉として、「家づくりをするときに地震対策をどう織り込んでおくか?」をご紹介します。地震の発生時に倒壊しない家にするのはもちろんですが、発生後に安全・安心に避難生活を行うことや、修復のことも含むため、今回は「家づくり」とは少し離れた内容にもなることをご理解ください。
まず、地震で壊れない家にする
「地震で倒壊しない家」は、住宅として必要最低限の性能です。では、倒壊を避けるためには、どのような家づくりをすればよいのでしょうか。
ひとつの目安として、2016年に発生した熊本地震(震度7が連続して2回発生)の国土交通省による被害調査があります。そこでは、「住宅性能表示制度による耐震等級3の住宅は、大きな損傷が見られず、大部分が未被害であった」と報告されています。
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「熊本地震における建築物被害の原因分析を行う委員会」報告書のポイント
国土交通省 住宅局
https://www.mlit.go.jp/common/001155087.pdf
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つまり、耐震等級3を前提にした家づくりをすれば、住宅の倒壊の危険は避けられる可能性は高いといえます。なお、耐震等級3の算出には「性能表示計算」と「構造計算(許容応力度計算など)」がありますが、「構造計算」による方がより精度が高いといわれています(理由について詳しくは、あらためて別のコラムでご紹介します)。
また、住宅の構造だけでなく建物の内部も大切。地震によってタンスやカップボードなどの大きな家具が倒れ、その下敷きになる危険性もあります。できれば家具は造り付けにして、背の高い家具は置かないか、もしも置く場合はしっかりと固定するのが安心といえます。
地震保険には加入しておこう
さて、全壊や半壊こそしなかったとしても、地震により住宅が何らかの損傷を受けた場合には修理をする必要が生じます。被災に対する公的な支援金は、基本的に全壊や大規模半壊が対象となるので、小規模な損壊については自費でまかなうしかありません。その時に助かるのが「地震保険」です。
地震保険は単体では加入できず、火災保険とセット(付帯)で契約します。京都府の2019年度の地震保険の付帯率は63.1%ですが、今後数十年先のリスクを考えると、地震保険の付帯はぜひしておきたいものです。なお、前述の耐震等級3を取得した住宅の場合、地震保険料が50%の割引になります。その点でも、耐震等級3の家づくりはメリットがあるといえます。
自宅が大丈夫なら「在宅避難」ができる
次に、地震発生の直後からの話です。「災害が発生したら避難所へ」と一般には言われますが、住宅に損傷がなければ「在宅避難」の方が肉体的にも精神的にも楽です。また、感染症対策を考えても、在宅避難は密の状況を避けることができます。
在宅で避難した場合に課題となるのが、電気・ガス、水や食料、そしてトイレです。水や食料は、家族の一週間分をストックしておくと安心です。ちなみに、4人家族だと水は90リットル弱が必要といわれています。これらを常備しておくためにパントリーを広めに作っておくのも家づくりの工夫です。また、水道が止まると水洗トイレは使用できません。近隣に仮設トイレが設置されても、被災者の長蛇の列ができます。そのため、携帯トイレが必要になってきます。目安は1人あたり1日5回、1週間分で35回分の備蓄が必要です。こちらもストックしておく場所を設けておきましょう。
そして、電気・ガスの問題です。大規模災害の被災経験がある方へのアンケートでも、「電気、ガスが使えない」が最も困ったことでした。スマホや照明が使えないのはまだしも(人によってはスマホがいちばん大切という場合もありますが)、冬期に暖房が使えなくなるのは命に関わってきます。
これについては、創エネルギー設備を搭載したゼロ・エネルギー住宅であれば、その心配も解消されます。夜間に発電ができない太陽光発電の場合は、蓄電池を設置したり電気自動車の蓄電池を利用することで夜も電力を供給することが考えられます。現在、創エネルギーや蓄電設備を含めた、住宅のゼロ・エネルギー化の技術の進歩はめざましく、またコストダウンも図られています。これから家づくりをする方は、ぜひ検討してみてください。
しっかりと備えれば地震も怖くない
このように、まずは、地震でも安全なシェルターとしての耐震等級3の家づくりを行い、多少の損壊に対しては地震保険に加入しておくことが大切。その上で、電気やガスの供給がストップしたとしても自宅で暮らせるエネルギー源を確保することと、地震発生から一週間を生き延びる食料品や消耗品を備蓄しておくことにより、万が一の地震が発生した後も、安心して暮らすことができるとお考えください。