スタッフコラム

京都で家を建てる(10)狭小地のメリットと課題

狭小地住宅の事例

家を新築するにあたって、親族がお持ちの土地での建替えや、土地を分筆して新築を行うという方以外は、土地を新たに購入する必要があります。しかし、県庁所在地の平均住宅地価ランキングにおいて、京都市は東京23区、大阪市、横浜市についで4番めに高い地価となっているのは(2019年地価公示・平均住宅地価の県庁所在地ランキング)、以前のコラムでもご紹介したとおり。そのような京都での土地購入とはどのような特徴があるのでしょうか?ここでは、宅地の多くを占める「狭小地」に対象を絞り、メリットや留意点をご紹介いたします。

狭小地住宅の事例

京都市内の住宅用地は20〜30坪がボリュームゾーン

実際、京都市の区ごとの土地価格の相場を見てみると、山科区や伏見区で坪当たり50〜60万円台、右京区、西京区、南区で80〜90万円台、北区、上京区、中京区では100万円を超え、東山区や下京区では170万円台が相場となっています(2020年12月現在のsuumoのデータより)。このような坪単価では広い土地を購入できる人は限られてしまうため、京都市内の土地は「小さな単位」で売りに出されるのが一般的です。

古屋がある広い土地を販売する場合は、解体して更地になった土地を2区画、あるいは3区画に分割されることも多くあります。ざっくりいうと、分割にあたって1区画あたりの最小面積制限のある第一種・第二種低層住居専用地域では、その制限ギリギリの100平方メートル(地域によっては80平方メートル)、そうでない地域では60平方メートル程度の区画で販売されるのがスタンダードではないでしょうか。これを坪換算すると18〜33坪。いわゆる「狭小地」といわれるものになります。

狭小地にもメリットはある

「狭小」と聞くとなんとなくマイナスイメージが先行するのですが、多くのメリットがあるのもの事実です。まず、坪単価がそこそこするとはいえ、面積が狭いので土地の購入価格を抑えることができます。さらに、土地を自分名義にする登記費用や固定資産税も土地の評価額をベースにしますから、同様に抑えることができます。特に固定資産税はその土地を所有する限り毎年支払うものですから、その差は大きいといえます。

また、狭小地に建てる住宅は必然的にコンパクトになります。建物についても土地と同じく固定資産税が発生しますが、こちらも建物の評価額を基準にしますから、税額は建物のサイズと同様にコンパクトにすることができます。

税金以外にもメリットがあります。もっとも大きいのが建築費用。建物が狭小になると坪単価は若干上がるものの、トータルコストは抑えることができます(ただし、トラックが横付けできない細い路地の奥にある狭小地では、建築時の資材の搬入コストが増える場合があるので要注意です)。さらに、新築から数十年を経過した後のメンテナンスやリフォームの費用も、大きな家のそれと比べると安くなるのは、想像いただけるかと思います。

一方で日々の生活でもメリットがあります。数字として現れるのが「光熱費が安い」こと。部屋数が限られますから、照明の数は少なくて済みます。また、建物のサイズが小さければ気積(室内の体積)も小さくなるため冷暖房の効きがよく、エネルギーの消費も少なくできます。さらに、床面積が狭いということは、お掃除も簡単に済ませられるということ。日常のことですから、その労力や時間も見過ごせません。

このように、家づくりの費用や暮らしのコスト、労力を抑えることができるのも、狭小地での暮らしです。
狭小地住宅の事例

狭小地ならではの検討や工夫も必要

次に、狭小地での家づくりの課題です。開けた土地に家を建てるのに比べてたくさんの規制があるのが狭小地です。

まず、防火について。狭小地の密集する地域は、防火・準防火地域と重なることが多いといえます。防火・準防火地域とは、その名の通り火災が発生した場合に延焼を抑える仕様が求められる地域です。使用する材料や内外装の仕上げに制限がありますから、防火・準防火地域では法律による細かな条件を踏まえながら、専門家と家づくりを検討する必要があります。

次に「斜線制限」について。狭小地は建物が密集するためお互いの日照を確保する配慮が必要です。よその家を日陰にしてしまわないよう、あるいは、道路上方を開放することで道路面などの日照を確保するように、建物の形状に制約が発生します。なお、「斜線制限」について詳しくは、スタッフコラム「そうだ、中藏で家建てよう(3)建物の計画2」で紹介していますのでご参考ください。

斜線制限だけでなく、狭小地ではたくさんの住宅が肩を寄せ合って暮らす地域ならではの、お互いが不快な思いをしないための配慮が必要になってきます。また、一方で、家族のプライバシーを守りながら快適に暮らすための工夫も必要です。

次回のコラムでは、これら狭小地での家づくりの留意点についてご紹介いたします。