ロングライフ住宅とは?
最近、「ロングライフ住宅」という言葉をよく耳にするようになりました。その名の通り「長寿命な住宅」のことです。
こう書くと、勘の良い方は「長期優良住宅」を思い出されるのではないでしょうか。長期優良住宅は、長期にわたり良好な状態で使用するための措置が講じられた優良な住宅です。 概ね100年使えることを前提とされています。
長期優良住宅の背景にあるのは、2006年に作成された住生活基本計画で示された、「新築(フロー)重視から、既存(ストック)重視の住宅政策に見直す方針」です。環境問題や資源・エネルギー問題がますます深刻化する中で、これまでの「住宅を作っては壊す」社会から、「いいものを作って、きちんと手入れして、長く大切に使う」社会へと移行することが重要となってきた社会の変化に対応したものです。
なお、住生活基本計画は、平成18年に制定された「住生活基本法」を基に、国と各都道府県が制定するもので、概ね5年ごとに見直しが行われます。最新の住生活基本計画が2021年3月に閣議決定されましたが、ここでも「脱炭素社会に向けた住宅循環システムの構築と良質な住宅ストックの形成」が目標のひとつとして掲げられています。
ロングライフ住宅は、これからの社会に求められる住宅といえます。
ロングライフ住宅づくりのポイントは?
それでは、ロングライフ住宅づくりはどのようにすればよいのでしょうか? すぐに思いつくのは、物理的に強く、劣化しにくい家にすることです。そしてもう一つは、ストレスなく暮らせる家にすることです。前者について詳しくは、次回以降のコラムで順にご説明していきます。今回は、後者の「ストレスなく暮らせる家」についてご紹介します。
そもそも、住宅におけるストレスとはなんでしょうか。これもまた二つにわけることができます。ひとつは住宅そのものに対する不満からくるストレス、もうひとつは、居住環境への不満からくるストレスです。
いずれの不満も時間が解決してくれることはありません。住宅に対する不満は、改修などにより改善しなければなりません。新築時には思ってもいなかった改修費用が発生します。できればそのような事態は避けたいものです。そのためには、新築の計画段階で不満が発生しないような住宅を考えておかなければならないのです。
一方、居住環境への不満は厄介です。自分で解決することは難しいからです。不満がピークに達すれば環境を変える、つまりせっかくの新居を手放し、住み替えをせざるを得なくなることさえあります。家を建てる場所選びは慎重にしないといけないということです。
それでは、住宅と居住環境、それぞれに対してどのような不満があるのでしょうか?国土交通省が行った「2018年住生活総合調査」の結果から考えてみましょう。
住宅に関する不満、第1位は「高齢者への配慮」
調査対象は、平成30年住宅・土地統計調査の調査対象世帯から、無作為に抽出した世帯です。持ち家世帯が70%、借家世帯が30%の比率となっています。住宅に対する不満のベスト10は以下のようになります(複数回答)。
1. 高齢者への配慮(段差がない等) 47.2%
2. 地震時の安全性 43.6%
3. 遮音性 42.9%
4. 台風時の安全性 38.8%
5. 断熱性 38.6%
6. 傷みの少なさ 37.6%
7. 省エネ性 36.3%
8. 防犯性 35.9%
9. 収納の多さ、使い勝手 35.6%
10. 火災に対する安全性 35.3%
これらの不満の多くは、住宅を高性能化、いわゆる「耐震等級を最高等級3にする」「高気密高断熱仕様にする」「省エネ、ゼロエネ仕様にする」「耐久性を考慮する」「耐火建築にする」することで、解消させることが可能です。また、防犯性や使い勝手の良いプラン、収納については、計画段階で設計士としっかり話し合うことで解消できます。さらに、1位である高齢者への配慮については、建てるときだけでなく、建ててから数十年後の生活を考えたプランニングを、これも計画段階から織り込んでおくことが重要でしょう。
逆の見方をするならば、予算の都合などから住宅の強度や断熱・気密といった性能を十分にしておかなければ、将来的に不満につながるということです。また、自由度の少ない規格化されたプランの住宅は、使い勝手や収納場所への不満が募る可能性があると言えます。
居住環境に対する不満ベスト10は?
次に、居住環境に対する不満を調査結果からみてみましょう。調査対象は、上記の調査と同じです。不満のベスト10は以下のようになります(複数回答)。
1. 周辺からの延焼のしにくさ 38.4%
2. 歩行時の安全性 36.7%
3. 災害時の避難のしやすさ 34.3%
4. 子どもの遊び場、子育て支援サービス 34.2%
5. 騒音・大気汚染の少なさ 29.7%
6. 福祉・文化施設など 29.4%
7. 親・子・親戚との距離 28.2%
8. 福祉・介護の生活支援サービス 27.0%
9. 敷地の広さや日当たり、風通しなどの空間のゆとり 26.8%
10. まちなみ・景観 26.3%
京都市内で言うならば、「子どもの遊び場、子育て支援サービス」、「医療・福祉・文化施設などへの利便性」、「福祉・介護の生活支援サービスの受けやすさ」については、市内のどこでも大差は無いと言えるでしょう。また、「歩行時の安全性」についても、市内のどこであろうと多かれ少なかれリスクがあり、エリアによって大きく変わることはないと思います。
一方で、まちなみや景観、建物の密集度ぐあいについては、都市計画における用途地域によって大きく異なってきます。住居地域であるか、そうでないかに二分できると言えるでしょう。商業地域や工業地域でも住宅は建てられますが、住環境については考慮がされていないため、これらのエリアでの暮らしは不満の要因が多くなるのが一般的です。
また、災害時の避難のしやすさは、命を守る行動を考えると大切です。災害(地震・水害)の被害想定については、京都市全域をハザードマップとして見ることができます。自分が購入しようと思う土地、あるいは建て替えをする土地が、災害時にどのような被害を受ける可能性があるか、またどう避難したらよいかは知っておく必要があります。
ロングライフ住宅はストレスなく暮らせることも大切
ここまで、ロングライフ住宅づくりをするために事前に知っておきたい住宅や居住環境の不満ポイントを紹介しました。ざっくり整理するならば、「場所選びは慎重に考える」「住宅性能は十分なものに」「ちゃんとした設計士と家づくりをする」ということになるかと思います。こう言うと当たり前のことのようですが、いざここに「予算」や「時間(期限)」が関わってくると冷静な判断ができなくなるのが人の常です。
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次回から数回は、ロングライフ住宅づくりを物理的な強さの面から考えていきたいと思います。